カフェモカの「モカ」のお話

珈琲店を経営している間に,ストレート珈琲としてご提供している「モカ」を「チョコレート入りのコーヒー」と勘違いされた方が何名かいらっしゃいました。

 

これは言うまでもなく「スターバックス用語」が浸透したおかげで,「モカ=カフェモカ=チョコレート入りのコーヒー」と理解されているからなのですが,スターバックスが台頭するずっと前から,喫茶店のメニューには「モカジャバ」という名前で「カカオ入り」のコーヒーが存在していたわけで,「カカオ入り」のコーヒーと「モカ」との間にはかなり昔から密接な関係があったように思われます。

 

果たして,何故「カカオ入り」のコーヒーの呼称に「モカ」という単語が使われるようになっているのでしょうか?

 

そもそも「モカ」というのは現在のイエメン(アラビア半島)にある港町の名前で,そこからヨーロッパに向けて輸出されていた「イエメン産のコーヒー」と「エチオピア産のコーヒー」の総称のことです。

 

この「モカ」は,まだアジアや中南米,アフリカなどでコーヒー栽培が広まる以前のヨーロッパではまさに「コーヒーの代名詞」的存在であり,そのため「モカ=コーヒー全般の総称」という意味で使用されることがよくあります。コーヒー風味のケーキやアイスクリームを「モカ○○」と呼ぶのはその名残りでしょう。

 

でも,「モカ」=「コーヒー全般」と解釈すると,「カフェモカ」は「コーヒー+コーヒー」ということになって意味を成しませんよね。だとすると,「モカ」には「コーヒー全般」以外の別の意味があるハズです。

 

一方「ジャバ」というのはジャワ島産のコーヒーの呼称ですので,「モカジャバ」というのは本来,文字通り「モカ」と「ジャバ」という産地の異なる2種類のコーヒー豆を使ったブレンドのことを指すことになります。(実際に「モカジャバ」というブレンドコーヒー豆を販売している店は沢山あります。) まだまだコーヒー産地の選択肢が少なかった時代には,「モカジャバ」がひょっとしたら唯一の「ブレンドコーヒー」の名称だったのかもしれません。

 

さて,どんどん複雑になってきてしまいました。本来「モカとジャバのブレンド」を指す「モカジャバ」がなぜ「カカオ入りコーヒー」のことを指すようになったのでしょうか?

 

これにも幾つか複数の説があるようなのですが,(例えばジャワ島はカカオの産地でもあるので「モカ=コーヒー」「ジャバ=カカオ」で「モカジャバ」と呼ぶ。。など。。でも,そうだとすると,「カフェモカ」ではなくて,「カフェジャバ」って呼ばれてそうですよね),

 

わたしが一番説得力がありそうに思えるのは, 「モカの持つ独特の力強い芳香,風味」の中にカカオのような風味が感じられたことから,あるアメリカの業者が,高価な「モカ」の代わりに,普通のコーヒーにカカオを混ぜて「モカっぽくした」コーヒーのことを,「モカジャバブレンド」と称して売り出したというもの。

 

これがアメリカ経由で日本に伝わり,「カカオ入りのコーヒー=モカジャバ」として普及したのではないかと(ミルクやホイップクリームを足したのはより「おいしく」飲むための工夫?)。。こう考えれば「カフェモカ」というのも「コーヒーにカカオを混ぜてモカっぽくしたコーヒー」の名称として納得できますよね。

 

つまり,「モカ」には

 

1.「イエメン産コーヒー」と「エチオピア産コーヒー」の総称

2.「コーヒー全般」の総称

3.コーヒーにカカオを入れて1.の意味におけるモカ「風味」にしたもの

 

という3つの意味があるということになり,「カフェモカ」「モカジャバ」の場合にはこの3.の意味が使われているのではないかと思われるのです。

 

※勿論,上述のように「モカジャバ」には本来の1.の意味での「モカ」と「ジャバ」のブレンドコーヒーの意味があることも忘れてはいけませんね。

 

いかがでしょう?実はこうやって書いていながらも,わたし本人があんまりスッキリしていないのですけどね(笑)。 でも,今のところこれ以上に自分で納得できる理由がないので,この説を上回る説得力の説を見つけるまではこのように理解しておこうと思います。