アメリカンコーヒーのお話

大多数の方の認識として,「アメリカンコーヒー」というのは「薄いコーヒー」のことで間違いないと思います。


ただ,その「薄い」のが「色が薄い」のか「味が薄い」のかでちょっと意味合いが変わってきます。


いわゆる「珈琲」をメインとしていない「喫茶店」や「レストラン」で「アメリカンコーヒー」といえば,おそらく単純に「味の薄い珈琲」,それも「通常の珈琲にお湯を足して薄めたもの」である確率が高いと思います。


これに対し,やや「珈琲」にこだわっている「喫茶店」や「珈琲ショップ」で「アメリカンコーヒー」というと,アメリカンロースト(浅煎り~中浅煎り)で焙煎した豆を使い,粗引きで抽出したコーヒーのことを指すことになります。つまり,「浅煎り」特有の酸味と芳香を持つ「色が薄いコーヒー」であって,決して「味が薄い」わけではないんですね。(カフェインやタンニン等の成分は深煎りの豆よりも浅煎りの豆のほうが多く含んでいるので,コーヒー成分で言えばむしろ「濃いコーヒー」になります)


つまり,「アメリカンコーヒー」には


1.アメリカンロースト(浅煎り)の珈琲豆から抽出した珈琲

2.豆の量や挽き方を調整して,あっさりめに抽出した珈琲


という2つがあり,コーヒーにこだわりを持つ人にとっては,「アメリカンコーヒー」といえば1の「浅煎りの色の薄いコーヒー」が正しいわけで,2の「味を薄めたコーヒー」は偽物だということになるのでしょう。

 

が,実はこの「アメリカンコーヒー」については以前から疑問に思っていた点が二つほどありまして。。


いろいろ調べても諸説あって良くわからなかったのですが,今回自分なりの解釈を加えてこの二つの疑問に対する解答を勝手にまとめてみようかな。。と。。


一つは,アメリカではかつて浅煎りの珈琲が主流だったため,浅煎りの珈琲豆から抽出する珈琲のことをアメリカンコーヒーと呼ぶようになった」というのが事実だったとして,「何故アメリカでは浅煎りの珈琲が主流だったのだろうか?」という点。


そして,もう一つは「あっさりめの薄い珈琲=アメリカンコーヒーというイメージが定着するようになったのは,70年代に珈琲豆の価格が高騰した際に,苦肉の策として各地の喫茶店が豆の量を減らして抽出したり,普通の珈琲にお湯を足して薄めたモノを(色が薄まって浅煎りのコーヒーのように見えるため)アメリカンコーヒーとして提供するようになったから」という説がありますが,本来であれば「薄めた珈琲」なんていう「味気ないモノ」がお客様に受け入れられて全国的に浸透するなんてことはないと思うのですが。。「日本で『薄い珈琲』がここまで一般的に普及したのはどうしてなのだろうか?」という点。


まず,最初の疑問に関してですが,これに対しては,完全なわたしの勝手な推測ですが,かなりの確率で正解なのではないかと思われる一つの「仮説」があります。


そもそもコーヒー豆というのは「生豆」の状態が一番「重く」,焙煎の度合いが進むにしたがって,水分が抜けて「軽く」なっていきます。つまり,「焙煎したコーヒー豆」としての「流通価格」が焙煎度合いに関わらず一定(重量あたり単価が一緒)なのであれば,「深煎り」のコーヒー豆よりも「浅煎り」のコーヒー豆の方が重い分,高値で取引できることになります。さらに,「浅煎り」の方が「深煎り」よりも「焙煎時間」が短くて済むワケですから,「合理主義の国,アメリカ」で「短時間で加工出来て,なおかつ高値で流通させられる」浅煎りのコーヒー豆が主流になるのは極めて「当然」の流れだったのではないでしょうか?


また。二つめの疑問に関しては,これまた何の根拠もありませんが,二種類の背景が関係しているのではないかと。。


一つは,日本が「お茶文化」の国であり,一日中「薄めに抽出したお茶」を水代りに何杯も飲む習慣を持っていたということ。


この習慣から,「薄めのコーヒー」がウマいかマズいかは別にして,手軽に何杯も飲める「お茶代り」の役割を果たすようになったのではないかと思われます。


もう一つは,かつて今よりも多くの「喫茶店」が存在していて,中には「あまり保管状態の良くない,酸化してしまった珈琲豆(粉)」を使う喫茶店が多かったことも理由の一つとして考えられるのではないでしょうか?


「酸化してしまった豆(粉)」を使って抽出した珈琲は,「浅煎りとは異なる嫌な酸味と渋み,さらにはエグみなどの雑味」が混ざってしまって,とても濃厚に抽出して飲める代物ではありません。(そんなことをしたら,胃を壊してしまいかねません)


そういった「酸化してしまった豆(粉)」を使った珈琲を出す店では,必然的に「薄く抽出(もしくは抽出後に薄める)」した「アメリカンコーヒー」を注文するお客様が増えることになったのではないかと。。


どうでしょう?。。今回書いたのはあくまでもわたしの勝手な推測で,何の根拠もデータの裏付けもありませんが,自分ではそれなりに説得力があるのではないかと思っているのですが。。