「カフェ」と「喫茶店」と「珈琲店」のお話

前職の話をする際に,わたしは何故か常に「珈琲店主をしておりました」と言っています。

別に「喫茶店のマスターをしておりました」でも同じことだと思いますし,ひょっとすると「カフェのオーナーをしておりました」と言った方が「受け」はいいのかもしれません。

でも,なんとなく自分の中では「珈琲店主」をしていた。。って言いたいんですよね。。爆

普段,皆さんは「カフェ」と「喫茶店」と「珈琲店」って単語を意識して使い分けていますか?

そもそも公的に認められている明確な「定義」はありませんので,各個人が自分の思うように好きに使い分ければいいと思いますが,わたし的にはいくつかこだわりたいポイントがあったりもします。

まず,「カフェ」と「喫茶店」ですが,よく聞くのが「カフェではお酒の提供もできるけど喫茶店ではできない」というもの。

これ,間違いではありません。。というか,この説の根拠は「食品営業許可申請」をする際の「飲食店営業」と「喫茶店営業」の違いにあるのだと思います。

確かに「喫茶店営業」で許可申請をすると「飲食店営業」よりも許可がおりやすい反面,アルコール類の提供はできないことになっています。

でも,「食品営業許可」における「喫茶店営業」はアルコール類の提供が出来ないだけでなく,単純な加熱以外の「調理全般」も出来ないことになってるんですね。

つまり,実際に営業している「喫茶店」のほとんどは「飲食店営業」で許可をとっているハズなんです。「喫茶店営業」で許可をとっているのは,ケーキ屋さんの一角に喫茶コーナーを設けている場合とか,駅構内のジューススタンドとか,あと,一番多いのが紙コップ式のドリンク自動販売機の設置とか。。(意外ですがこの場合も「喫茶店営業」の許可が必要だったりします)

一方,わたしを含め,飲食店経験者と話をしていて共感を得ることが多かったのは、アルコール提供の有無よりもフードメニューの比重を「カフェ」と「喫茶店」の判断基準とするもの。

特に日本では「ビストロカフェ」とか「イタリアンカフェ」「フレンチカフェ」とか,食事を前提とした飲食店に「カフェ」という名前のついている店が多くなっていますし,店の売り上げの50%以上を食事メニューが占める店が「カフェ」,50%以上をドリンクメニューが占める店が「喫茶店」と考えると,わりと納得いくラインだったりします。(でも,実際の売り上げはお客さんにはわかりませんから,メニューのラインアップで想定するしかないのですが)

あと,イメージ的にはやはり「カフェ」といえばヨーロッパ的な「明るいオープンスペース」のイメージがありますが,逆に「喫茶店」というと「抑えめの照明でプライベート空間を大切にしている」イメージがありますよね。

要するに「明るいオープンスペースで食事メニューが充実している店」が「カフェ」,「照明控えめで座席の間が区切られており,ドリンクメニュー中心の店」が「喫茶店」,その中間の店はどちらで呼んでも可。といった感じでしょうか?

次に,「喫茶店」と「珈琲店」ですが,これも上述のメニュー比重で考えれば,店の売り上げの50%以上をコーヒーメニューが占める店が「珈琲店」ということになるのかもしれません。わたしの経営していた「やわらぎ珈琲店」(上部写真右)も店の売り上げの60%以上を珈琲メニューが占めておりましたので,その意味では「珈琲店」と名乗っても許されるのではないかと思います。

あと,これはわたしの完全に個人的な意見ですが,「喫茶店」は上記のように「プライベート空間を大切にしている」イメージで,どちらかというと「飲食代という形で費用を徴収するレンタルスペース」的なイメージが強いんですよね。

つまり,利用目的の第一優先が「何を飲むか」よりも,「何をするか」=「おしゃべりをしたり,本を読んだり,勉強をしたり,仕事の打ち合わせをしたり」であることが許されるのが「喫茶店」であって,「珈琲店」や「紅茶専門店」と名乗る店はあくまでも「何をするか」よりも「何を飲むか」を優先して欲しい。。という店主の希望が含まれているような気がします。。あ,しつこいですけど,あくまでもわたしの個人的な意見ですよ。

でも,今度「珈琲店」とか「紅茶専門店」とか名のついた店に入るときは,そいういう店主の思いが詰まっているのかもしれない。。と思って,「何を飲むか」を意識してあげてください。元「珈琲店主」からのお願いです。